ハイパーシコシコ自分語りうどん部

†お会計時に渡されるクーポン券は食器返却のときそのまま捨てがち†

「起こそうキセキを!」

 

 

 

 

 

キセキって

 

 

 

 

 

 

起こるんすよね。

 

 

 

 

 

この言葉を出しただけで察しのいい方は既にお気づきだろう。この記事は「高速バスをジャーするかしないかの瀬戸際を彷徨ったオタクのログ」だ。

 

もしあなたにお時間があるのならば、ちっぽけで他愛のないオタクの小さなキセキの話を聞いていってほしい。

 

 

 

 

いつものように仕事を終え、いつものように自宅に帰り、いつもの時間の晩御飯を済ませる。いつもと違うのは今晩のうちに東京へと移動して、そこから夜行バスで仙台まで向かわなければならないということ。そしてこの日は、少しだけ雨と風が強かったということ。

 

ここから僕の物語が始まった。

 

          🚗               🚌            🚌

自宅   ⇨   バス停   ⇨   東京   ⇨   仙台

         30m          1h30m       23:40発

 

23時40分東京発の夜行バスに乗るため、20時30分に自宅を出る。高速バスの乗り場までは車で30分。高速バスに乗ってからは1時間30分。21時のバスに乗れば、1時間の余裕を持って東京発のバスを待てる。よし、これで行こう。

あれだけ降っていた雨は止んでいた。

 

 

フラグ。

 

 

もう一度言う。東京発の夜行バスの出発時刻は23時40分だ。

 

私の住む街には、東京までの交通手段はバスしかない。電車が通っていない代わりに東京行きのバスが10分に1本出ているが、このラインが断たれれば完全に孤立する。これが「陸の孤島」と呼ばれる所以だ。

 

最寄りの高速バス乗り場からは高速バスで1時間30分ほどかかるので、最悪22時にはバスに乗らなければない。

 

21時少しすぎ、高速バス乗り場着。

余裕だ…。伊達に長年オタクムーブをかましていたわけじゃない。リスク管理はバッチリだ。今までの自分が、今の自分を作っていることを実感した。

 

バスの待合所ではガタイの良い兄ちゃんがひとり音楽を聴きながら待っていた。

「(21時のバスは行ってしまったのか…)」そう思った僕は、次のバスを待つことにした。21時20分と少しだけ時間が空くが構わない。

 

21時10分。

賢そうなJDらしき女の子と、おばあさんが乱入してきた。バス停が突然華やかになる。

 

21時20分。

そろそろバスが来るだろうと、全員で外に出た。冷たい風が頬を撫でる。つい先ほどまで降っていた、大雨の気配を確かに感じた。

 

21時30分。

少し遅れているのだろうか。バスはまだ来ない。そんなことを全員が思っていたのだろう。皆大人しくバスを待っていた。僕の後ろには男性が並んだ。

 

21時40分

おかしい。

そう思った頃には、バス停前に人だかりが出来ていた。

 

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マジかよ。

 

瞬間、心拍数が跳ね上がった。血の気が少しずつ引いて行くのがわかる。え、。HPでは普通に運行しているたはずだ。なぜ。しかもこんな小さく。どうする。明日か?明日にするか?でも明日が運行しているという確証はない。行くか?東京。車で?でもどこに駐めておく?、

即座に次の手を考え始めるが頭がまとまらない。僕はかなり焦っていた。

 

マジかよ。こんなところにあったんですか?もっと大々的に告知しとけよ…。皆が思い思いに口にする。どうやらここにいる全員が、何かしらの時間的制約を受けてここにいるようだ。

 

ガタイの良い兄ちゃんは不満の声を漏らしていた。しかしその焦った口調とは裏腹に、冷静にバス会社に電話している。行動派だ。僕も彼に続いて、バス会社に電話した。

 

結果、バスは運行していなかった。

どうしよう…。我々は先程出会ったばかりなのに、まとまって次の手を考え始めていた。焦る。ガタイの良い兄ちゃんがとっさに声をあげる。「タクシーで行きませんか!?」どうやら彼はどうしても今晩中に東京に行かなければならないようだ。しかし皆が回答を出しあぐんでいる。金額や時間等の制約があるのだろう。

 

21時50分

我々は輪になって考え始める。賢そうなJDは父に車を出してもらうよう頼んでいた。僕の後ろに並んでいた男性(神)はとても落ち着いた様子でなにかを調べている。僕は先程挙がった「タクシーで行く案」について詳しく話を聞くため、バス停に停まっていたおっちゃんに話を聞きに向かった。

 

千葉から来たというおっちゃんは渋滞に捕まって大変だったと言っていた。下道で行けば行けないことはないが、露骨に東京に行くことを嫌がっている。無理そうだ。しょうがない。僕はその場を後にした。

 

22時00分

僕は半ば諦めていた。大事な約束があったがすまない。天候には敵わない。明日行けたら行こう。間に合うかわからないけど。バスの待合時に戻ると、ガタイの良い兄ちゃんもJDもおらず、落ち着いた男性(神)しかいなかった。

男性に東京に行く理由を聞く。ただの時間つぶしにしかならないが、なにか話さなければ落ち着かなかった。ひとしきり言葉を交わしたあと、僕はその場を後にしようとする。

 

 

「乗って行きますか?」

 

 

僕の心は揺らいだ。

男性は車を持っており、東京に自宅があるためこれから行けないことはないそうなのだ。

 

しかし、私はもう東京に行くことを諦めていた。行けたところでバスには間に合わない。さらば僕の¥7,200。給料日前だったら7人の野口を想い泣き喚いていたことだろうが、本日は待ちに待った給料日。金を持っているという事実が、確固たる自分の核を歪めていた。

 

僕は彼を先に見送り、ひとり待合室に残った。バスの払い戻し手続きが可能かどうかを確かめる。

 

無理だ。残念。

金があると言いながら¥7,200を諦めてないあたりが卑しい。払い戻しも出来ずやることもないので、家に帰ろうとして待合室を出た。

いつもより冷たい風が、僕の心をさらって行くようだった。

 

 

22時10分

待合室を出ると、先程の男性(神)が知らない女性といた。どうやらバスが運行してあることを知らずに、高速バスに乗りに来たようだ。

 

そんな時、ガタイの良い兄ちゃんがどこやからともなく帰ってきた。どうやらタクシーの運ちゃんを説得していたようだったが、説得はうまくいかなかったようだ。

 

しかし、彼はずっと諦めていなかった。

 

 

 

「乗って行きませんか?」

 

 

男性に、再び声をかけられる。

 

 

私は思い出した。

私が憧れた子達は、こんなことでは諦めなかった。こんな状況こそ楽しみたい、楽しむべきだ。私はそんな人間になりたい。そんな生き方をしたかったことを思い出した。

 

 

動け。

 

動けば変わると、僕は知っている。

 

 

22時20分。

僕はようやく、その固い首を縦に振った。

 

 

 

そこからはトントン拍子で話が進んだ。

常に落ち着いていた男性(神)が車を回し、僕と女性とガタイの良い兄ちゃんが乗り込む。ガソリンを給油し有料道路に入る。僕がバスに間に合わなくても構わないのでゆっくり行きましょうと彼に告げると、彼は少しだけ申し訳なさそうに善処しますと笑った。

本当にありがたい話だ。

 

車の中では色々な話をした。

 

ガタイの良い兄ちゃんは、はじめバスの運行状況に文句を言っていたが、そのうち皆に話を振って場を盛り上げた。彼は友達と東京から車で神戸にライブを観に行くそうだ。小倉唯の。

彼が"同類"だと気づき、そこからはいろいろな話をした。

 

女性は明日、東京でお仕事があるそうだった。しょっちゅうGoogleで高速道路の交通状況を調べていたことから、Google姐さんのあだ名を付けられていた(つけた)(失礼)

僕が「ここまで結構順調に進んでいますね」と言うと「まぁ、ここまではGoogle通りですね」と返して来た。まるで自分の手柄のようにしている。さては回し者なのだろうか。熱いGoogle愛と信仰心に、僕らは声を出して笑った。

 

運転手の男性は神だった。常に落ち着いた様子でハンドルを切る姿が印象的だったが、この人は神だった。運転上手な神。彼は毎日2時間以上かけて通勤をしているらしいことから、どうか明日からは会社が彼の家に来るようにYahoo!の神に祈った。こんなことさせるなんて、神には似合わない。

落ち着き慣れているその様子に、小倉唯が「修羅場慣れしてますね…」という言葉を吐いた。

どんな慣れだよ。

 

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正直、楽しかった。

はじめは焦っていた。待ち合わせに間に合わない。金を落とす。どうしよう。と。

だが、車に乗り込んだあとの4人は違った。焦りの表情は和らぎ、みなが口々に「これはいい思い出ですよ」「なんかちょっと楽しいです」「笑い話になりますね〜」と言っていた。ちょうど有料道路の閉鎖もなく、道路が空いていたこともラッキーだったのかもしれない。思いのほか車はスイスイ進み、ついに東京までたどり着いた。

 

とてもちっぽけで些細な出来事だが、"キセキが起きるかも知らない"という事実が、みんなを前向きな気持ちにさせていた。

 

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23時20分。

本当に間に合った。

僕は彼に5,000円を投げた。ただ自分を東京まで運んでくれた御恩を返したいのではない。諦めかけた気持ちを救ってくれたことが嬉しかったのだ。流石に多すぎると3,000円を返してきたが、僕は受けとらなかった。ごめん嘘。お金に卑しいから受け取った。神は最後まで神だった。

 

東京駅でGoogle信仰者と小倉唯と別れる。

最初は焦り色を見せていたふたりは、とても良い顔をしていた。僕はふたりの明日が予定通り進むことを想像して、なんだか嬉しくなった。

 

 

 

キセキは、起きる。

 

キセキと呼ぶにはあまりに大仰だが、それでも僕にはキセキだと思った。諦めかけた心を救ったのは見ず知らずの他人で、キセキを起こすための術を生み出し、実行した。

 

動けば変わる、この言葉は事実だった。

 

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23時40分。

ヒョ〜〜〜!!!バスの乗車時刻に間に合ったテンションからサンドイッチを買ったが、飲食禁止なので食べられないことに気づいた。

 

んなこたどうでもいい。

旅が始まる前から、いい思い出ができたと感じた。

 

 

 

2019.10.25

ぶれぶれのジョニー

(((((( c(・ω・()・ω・)っ)))))