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【感想】ヨルシカ Live Tour 2021「盗作」に関するあれこれ

 

9月27日(月)、開催が延期されていた【ヨルシカ Live Tour 2021「盗作」@名古屋公演】に参戦してきました。

めちゃめちゃよかったです。Suisさんの圧倒的な声量と表現力、n-bunaさんの演奏とパフォーマンスに圧倒された1時間30分でした。また、ライブを観終わっての感想が「おもしろかった」だったのも面白かったです。

というのも1時間半ほどの上映時間の全てが”演奏”と”朗読(映像つき)”で構成されていて、MCやトークパートは一切なかったのです。曲間のモノローグは朗読劇に近くて、より楽曲の世界観を際立たせているように感じましたね。読み手がn-bunaさんだったのも良善いの宵(ヨヨイノヨイ)でした。彼の中性的でハスキーな御声が世界観によく合う…!

私小説(?)の内容は割愛しますが、創作を生業とする男とその妻のひと夏のエピソードが回顧録的に語られたものでした。妻を失ったであろう男の後悔、嘆き、そして肯定という一連のエピソードがコンサートを通じて描かれており、そのまま楽曲へ引き継がれるため世界観ブーストがすごかったです。エピソードは「盗作」の初回限定盤に付属された小説のワンシーンでしょうか?ただ、物語の解像度がものすごく上げられているためかなり良かったです。ほーんと良い。オタクなので良いしか言えなくなっちゃいます。

 

セトリは2020年8月に発売された「盗作」と、2021年1月に発売された「創作」の楽曲で構成されていました。男を表題するかのように披露された「春ひさぎ」「思想犯」。映像がえっちすぎて歌が入ってこない「昼鳶」。ゴリゴリのベースラインがきもちいいい「レプリカント」など、物語、音楽、映像、どれを楽しんでも楽しめるようなライブになっていたと思います。だから観終わった後の感想が「おもしろかった」なのかもしれません。ただ昼鳶の映像はえっちすぎたんだよな…(2回目)。

兎にも角にも、Suisさんのパフォーマンスがものすごかった。2階席だったため表情などは見えませんでしたが、そんな些細なことを吹き飛ばすようなロングトーンや、胸がきゅっと締め付けられるようなウィスパーボイスなど、歌唱力がものすごくて心が震えました。私的ベストバウトは「風を食む」。声の表情が豊か過ぎて泣きそうになりました。また、「レプリカント」「昼鳶」「爆弾魔」などのアップテンポなナンバーでは全身を使って物語の世界観を表現しており、彼女から強烈な”生”を感じたのが良かったです。私はここにいるぞ!ここで生きているぞと言わんばかりの絶唱に、これこれこれこれ~~~!!!これがライブだよな~~~~!!とか私も叫んでいましたね。心の中で。

よかったです、ご無事で…

 

続いて演出の話ですが、舞台装置として設置されたベンチが良い味を出していましたね。ヨルシカの楽曲にたびたび登場するベンチがモチーフとして起用されているのは納得でした。そして「盗作」で突如現れたガラクタの山。乱反射していて綺麗でしたね(?)。楽曲のイメージをそのまま顕現させたような景色に思わず息を呑みました。映像も「爆弾魔」のような抽象的な破壊のイメージから、「花人局」のようなリアリティのあるものまで、細部へのこだわりも感じます。

特におもしろいと思ったのは、楽曲間に挟まれる「男の物語」が、次第にn-bunaさんとSuisさんに重なってゆくように感じたことです。ベンチに腰掛け、花火を背にするSuisさんの姿がだんだん男の記憶の中の”妻”と重なって見えたんですね。画面の向こうの「フィクション」がいつの間にか顕現していて、そこにリアリティを感じずにはいられなかったのです。ライブが進むたびに男の物語に引き込まれてゆく感覚を肌で感じ、私がライブに来てよかったと感じた理由のひとつになりました。狙っての構成でしょうか?ものすんごいよかったです。

 

椅子から立ち上がり歩き始める男。その姿は頼りないようで、情けないようで、でも生きることを諦めていないような背中に情念にも似た生への執着を感じました。ライブって、生きることと同義なのかなぁ、と思う間もなく拍手に包まれる会場。アンコールもなく、美しい幕引きだったと思います。むしろない方が良い…やめてくれ…とか思ってたのでアンコールがなくてよかったです。負け犬にアンコールはいらないという皮肉でしょうか(失礼)。

 

正直なめてました。ヨルシカの2人が生み出す世界っていわば「他人事」で、なんというか”入り込む余地”がないんですね。楽曲の中で物語が完結していて、そこに自分を重ね合わせる隙が無い。よく失恋の曲に自身を重ねるということもありますが、彼らの楽曲でそれはできない。むしろ自身を重ね合わせたくない。その方が美しいから。そう思ってしまうが故に、私は彼らの音楽を小さな機械の中でひっそりと楽しむファンの一人で良いと思っていたのです。

ですがどうでしょう、目の前に容赦なく描かれる物語。そこに生きる人間たちのとめどない感情。これを受け取るのに、ライブ以上の感動はあるでしょうか。いや、無い(反語)。

 

これからもまだまだ彼らから目を離せません。画面の向こうから見守っています。

 

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2021.10.03

ぶれぶれのジョニー

(((((( c(・ω・()・ω・)っ)))))